立法において押さえておくべき事など

言論の自主規制をせまる「特定表現規制否認派」 - 地下生活者の手遊び
http://d.hatena.ne.jp/tikani_nemuru_M/20090609/1244558464

交流がある訳でもないのでGET27さんがどのような考えをもっているのかはわかりませんが、このまま放置して規制反対派が反論できない人ばかりだと思われるのもなんなので、質問の(1)(2)の部分だけ代わりにお答えします。

踏まえるべき基本的な事項から。

1、法律的な創作物規制の枠組み

2009-06-09 - 奥村徹弁護士の見解
ttp://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20090609#1244515747
表現の自由の限界を考える時に、「殺人」と「殺人を助長する創作物」は、他者の権利侵害のあるなしの点で、分けて考えないと、頭悪いと思われますよ。対立利益が違うんですよ。こういうことがわからない人は議論に加わってはダメですよ。
 政治的見解を表明するために殺人するという場合は、そういう表現自体が重大な権利侵害だから、表現の自由の面は大幅に制約される。
 殺人行為一般を肯定するとか、助長するとか、煽動する表現の場合は、それ自体では、権利侵害はないから、権利侵害以外の理由(公共の福祉)以外の理由で制約されるとしても、表現の自由が大幅に制約されることはない。

2、法規制をする場合の、閣法と議員立法の違い

(1)閣法→「法律1行に30分、1時間費やすことなどザラ」と言われる 内閣法制局の厳しい審査を受ける。この際、憲法および他の現行法制との関係など、法律的・技術的にあらゆる角度から検証され、当該立法が合憲かどうかの厳格な審査も行われる。
(2)議員立法内閣法制局の審査は受けない。そのため、厳密な憲法解釈を含めた内閣法制局の審査が通るかが疑問視されるような法律を、審査が緩い議員立法として提出するという利用のされ方がされる場合もある。

3、今回の創作物規制において業界側に自主規制を迫るやり方

王様を欲しがったカエル ソフ倫が凌辱ゲーム規制を決意するまでの経緯
http://toriyamazine.blog100.fc2.com/blog-entry-237.html
10)警察、及びに内閣府ソフ倫に対する見解は、「 政府(この場合は官僚)は表現の自由を規制する法律を作れない。憲法に抵触するおそれがあるからだ。しかし、議員立法の場合は、表現の自由を切り離した規制法案を成立させることは可能である 」というものだった。

と、このように(アホ議員が立法するのでいい加減でもどうにかなる)議員立法の可能性をちらつかせながら自主規制を迫ったのが、基本的な構図です。(私は業界関係者ではありませんが)エロゲー製作者側から見れば、自分たちを守ってくれるのは「法律の形式的な側面」「立憲国家的な人権保障」であり、そこを曖昧にする議論には乗れないでしょう。
で、元エントリーの質問にお答えします。

1)「こういう議論」って、どういう議論? その典型例を指示してくれにゃーかね?
→「差別」と「差別を助長する創作物」は対立利益が違うため、他者の権利侵害のあるなしで分けて考えるのが基本中の基本。その境界線を曖昧にしようとする議論。私個人はtikani_nemuru_Mさんの立論は政治的な議論だという事は分かっていますが、法律に慣れていない人や規制したい人達は、そこを曖昧にして法規制に向けた根拠の一つとして理解するのではないかと思います。

2)で、なぜそれを控えるべきなのか、説明してくれにゃーかね?
→閣法での法規制ならば内閣法制局の審査をクリアできないので、境界線を曖昧にした人権制約立法は導入される事はありませんが、議員立法ならば適当な法理でも規制できてしまう可能性があるから。現在、国会では児童ポルノ法に絡んだ創作物規制なども議論されていますが、(内容への賛否は別にして)そういった事に正当性を与えるような議論は、結果として法規制に向けた後押しとして機能します。

>地下猫さんの立論とこの彼の公権力論とを分かつものがあるとしたら、それは多分公権力への個人的な警戒心や嫌悪感に過ぎないのでは、と疑ってしまう。
歴史的に公権力が表現を規制してろくなことをしてこなかったという認識は実に常識的なものにゃんが、これがチミにかかると「個人的な警戒心や嫌悪感に過ぎない」となるのかにゃ? アタマ痛え。

前回の記事にあった上記部分ですが、mixi日記は2,000くらい見てきましたが、規制派寄りの日記を書いた人で公権力に対する警戒心なんてもっている人は、ほとんどいませんでした。個人的には、サヨクとポルノ関係者といった、歴史的に緊張関係のある人達以外に、公権力と表現規制の危険性うんぬんを理解している人は殆どいないと思います。

3)それと、チミの「戦略」ってどういうもの?
私はGET27さんではないので、分かりません(笑)。ただ、tikani_nemuru_Mさんの立論は「差別問題」を考えるための枠組みであって、法規制を防ぐための枠組みではない事だけは指摘しておきます。

フェミニズム関係の書籍は、マッキノン、ドウォーキンジュディス・バトラーくらいは読んでいますが、「差別問題」に関しては私には特段の見識はなく、総合的な結論とかはありませんので、返信は不要です。後、当たり前ですが、私は言論の自主規制とかは迫ったりしませんので、その点も安心して下さい(笑)。