外国人の参政権に関して・その2

外国人参政権でひとこと - はてなハイク
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コメント欄を承認制にしてみた。 - dj19の日記
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色々とカオスになっていましたが、法律の判例・通説やメリット・デメリットやPROS・CONSの議論などは、賛成・反対を問わずに議論のための共通の前提や土俵になるんじゃないか?と思って、少し書いてみます。
多分、一般的な見解だと思われるものを中心に説明していきますが、異論とか質問とかありましたら、書き込みをして下さい。

人権問題を考える場合の順序

(1)人権は、日本人・外国人問わずに保障されている。外国人についても、権利の性質上適用可能な人権規定はすべて及ぶものと考えられていて(マクリーン事件判例自由権規約2条1項、社会権規約2条2項)、現在は人権規定の種類と外国人の類型に応じた個別具体的な争点になっている。
(2) ある政策を反映して作成された法律が人権問題となるかは、当該法律によって制約されている行為が憲法の規定によって保障されているかどうかによる(保護範囲)。それに対して、「誰が」憲法によって保障されている権利を享有するかということは別個の問題になる(享有主体)。外国人の人権享有主体性については、日本国民に固有の人権(参政権公務就任権)以外は、外国人も人権享有主体となる。
(3)一般的に言えば、自由権の制限は憲法問題になりやすく社会権の制限は立法政策上の問題になりがち。但し、社会権についても、現在は内外国人平等原則が採用されている関係(社会権規約2条2項)で、外国人との理由で排除することは、(その根本的な理由はともかく)技術的には許されていないといえる。
外国人に保障されない権利の御三家は、「参政権」「公務就任権」「入国の自由」になるが、「入国の自由」の場合は、「滞在」を上陸の延長と見て権利を認めない見解、上陸まで含めて権利を認める見解、上陸と滞在を分け、(滞在中の人権保障のために)滞在が一部権利として認識される見解があり、当事者の生活上の利益にも深く関わってくるので、人権問題としても捉えられる。
これに対し、参政権は一般的には、外国人に保証された権利とはいえない。そのため、参政権は人権問題というよりは政策論の問題になってくるが、日本には在日コリアンという特殊なカテゴリーの外国人が存在し、国籍取得において出生地主義的要素が極端に制限されている法制度が採用されている事もあり、これを単なる政策議論に任せておいてよいのかは検討が必要になり、人権問題として扱う事も可能になる。

と、ここまで細かく分けて、ようやく外国人への参政権付与が「人権問題」と認識される(特殊な)ケースについての言及になります。当たり前ですが、外国人への参政権付与は「自明」ではありません。認められるのは地方参政権の選挙権のみというのが一般的で(被選挙権は違憲の可能性が出てきます)、鳩山総理みたいに国政参政権も与えてもいいのではないか?(http://www.hatoyama.gr.jp/speech/ot02_2.html)という見解は、現段階では明確に違憲です(そういう学説もありますが、少数説です)。

外国人参政権を巡る状況

上記のような事を踏まえて、「外国人参政権」が話題になってきます。
(1)外国人参政権を巡る学説の状況
外国人参政権を巡る学説の状況を分類すると、以下のようになります。

憲法上、付与が禁止されている(禁止説)
憲法上、付与が要請されている(要請説)
憲法上、付与は要請されていないが、付与しても違憲ではない(許容説)

判例・通説は③の許容説を採用しています。細かくは、国政参政権は「国民主権」の原理から禁止説を、地方参政権は「地方自治」の観点から、選挙権は許容説を、被選挙権は(明示していませんが)論理的に考えると禁止説といった感じで解釈するのが一般的ではないかと思います。

この後は個人的な見解になりますが、許容説に立った上で、政策論として「外国人参政権を付与すべきだ」といった場合は、その事によるメリットやデメリット、PROS・CONSを語って議論をする必要があり、禁止説(外国人の地方参政権違憲論)に立った場合は、「国政と地方の政治は一体といえるか?」という点に関して見解を明らかにして議論すべきではないかと思います。

(2)国政と地方政治の一体性
「国政と地方の政治は一体といえるか?」という点に関してですが、一般的な理解としては、地方議会の条例制定は「法律の範囲内で」行う事とされているため、地方で外国人の意向を反映した条例が制定されても、その内容が法律と矛盾する場合は、制度上常に法律の内容が優先されます。そのため、国政参政権地方参政権は峻別され、別の原理によって付与・禁止を決める事ができ、国政は「国民主権」の原理から参政権が否定されても、地方は「地方自治」の観点から選挙権を付与しても大丈夫とされています。

これに対し、禁止説に立って外国人参政権を否定する側の見解は……あんまりちゃんとしたものが出ていないのが現状だったりします。そのため、禁止説にたって地方参政権も否定する議論をしようとした場合は、以下の点に言及する事が必要になってくると思います。

・地方政治と「国民主権」の関係性。地方政治に国民主権の要素が内包される事
・前述した法の上下関係を踏まえ、将来的に国政から地方政治への権限委譲が進んできた場合の政治システムはどうなるかについて
・(国の事務と自治体の事務をどう分けるかで、参政権付与が可能か決まるので)下位規範によって憲法解釈が左右される可能性があるが、その事への見解

ここから先は、賛成するにしろ反対するにしろ、色々な論拠がある訳ですが、とりあえず何か思う事などありましたら、コメントいただければ幸いです。
後、以下のページにも外国人参政権に関して色々まとめていますので、興味のある方は参考にして下さい。

e-politics - 外国人参政権
http://www7.atwiki.jp/epolitics/pages/216.html