財政問題について・その1(公共事業と社会福祉の割合)

過去、日本共産党は日本の予算構造は公共事業に50兆円・社会保障に20兆円になっていると主張していました。共産党の主張なので眉唾ものという人も多いでしょうが、財政問題というのは全体像が摑みにくく、信じている人も時々いるようなので、今現在の状況に沿って補足説明をします。2000年頃に日本共産党がそう主張していましたが、その試算の根拠は以下のようになるようです。

日本共産党知りたい聞きたい/公共事業50兆、社会保障20兆の根拠は?
http://www.jcp.or.jp/faq_box/001/200117_faq.html
 公共事業に使われる費用には、国の公共事業費(一般会計と特別会計)、地方自治体の公共事業費、公団や地方公営企業等の事業費がありますが、さらに庁舎建設などの施設整備費も広い意味での公共事業費に入ります。これらの総額を行政投資額といい、毎年二月ごろ発行される自治省作成の統計報告書『行政投資実績』にその額が示されています。
 一番新しい数字は、九六年度で、国と地方の行政投資額(決算ベース)は、合計で四十九兆千二百六十七億円。約五十兆円になっています。ただし、 この五十兆円は、すべて税金ではありません。公社や公団の事業費は、財政投融資資金をあて、さらに建設国債や地方債も含まれています。
 社会保障費について、国と地方の支出を包括的に見ることができるのは、毎年、国立社会保障・人口問題研究所が発表している統計資料『社会保障給付費』の中の「社会保障財源の項目別推移」です。この「社会保障財源の項目別推移」に「公費負担」の推移、つまり国庫負担と地方自治体負担を合わせた社会保障費の推移が載せられています。一番新しい統計は九七年度で、二十一兆七千五百三十三億円(九六年度は、二十一兆三千三百四億円)。約二十兆円になっています。

この試算に関しては、当時の試算も全体像を不正確に抜き出したものですが、当時の予算配分に従った検証は混乱を招くので、今現在の予算配分に基づいて説明します。
まず、「公共事業50兆円」の根拠となる「行政投資額」ですが、これは2000年当時においては50兆円近くありましたが、 今現在は小泉政権の公共事業削減方針によって、24兆1,518億円(2006年度の数字)と半分にまで縮小しています。

行政投資額の推移(単位:億円)
年度 金額 前年比
1999 447,438 3.1%
2000 413,913 △5.3%
2001 384,492 △7.5%
2002 360,073 △7.1%
2003 315,941 △6.4%
2004 272,099 △12.3%
2005 254,691 △13.9%
2006 241,518 △6.4%
出展:総務省公式サイト
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2007/pdf/071225_1_bs1.pdf

社会保障給付についてですが、一般会計における社会保障給付費は、2007年度が21兆7828億円ですが、 社会保障給付費という支出全体でみると95.7兆円(国民所得費24.9%)になります。 この社会保障給付費は2025年度には141兆円まで増大すると想定されています(厚生労働省推計)。
一般会計における公共事業費の支出額は、以下の通りになります。

公共事業関係費(単位:10億円)
2006年 7,709
2007年 7,252
2008年 6,735

そのため、公共事業:社会保障の予算比を見ると、以下のようになります。

一般会計からの支出額に拘らずに国・地方のトータルで見る場合→24兆:95兆(1:4)
一般会計からの支出額に限定して見る場合→7兆:21兆(1:3)

上記のような数字が実際のため、統計の基準を統一すれば「欧米と比べた逆立ちした財政」というのは実態を示した表現ではなく、日本も欧米同様に社会保障に公共事業の3倍〜4倍程度の支出がされていると判断できると思います。