女子差別撤廃条約選択議定書批准問題に関して(その2)

e-politics - 国際人権条約-女子差別撤廃条約
http://www7.atwiki.jp/epolitics/pages/286.html
関連する国会議員ブログへのリンク
http://www7.atwiki.jp/epolitics/pages/288.html

上記に、この問題のまとめを載せました。

閑寂な草庵 - kanjaku - 女子差別撤廃条約の選択議定書批准に賛成する! その2
http://kanjaku.blog.shinobi.jp/Entry/424/

上記のサイトの方で検討されているようなので、トラックバックを飛ばしてみます。ちなみに、私自信は批准してもしなくても良いと思っていますが、解釈の精度を上げるために検討を続けています。

(2)司法権の独立含め、我が国の司法制度との関連で問題が生じるおそれがある。
司法権との関係は前回の記事で指摘した通り、何の問題もないと考えられる。

法務省の見解らしいが、なぜ司法権の独立が侵害されるのか根拠が不明だ。
重要なのは、たとえ女子差別撤廃委員会で最高裁の判断と異なる判断がなされようと、最高裁の判断自体は確定するのであって、例えば、日本の裁判所が女性からの損害賠償請求を棄却する判決を出し、それが確定すれば、裁判所の判断を無視して損害賠償の支払い命令が出されることはあり得ない。
これが、欧州人権裁判所との違いである。
その後、新たな制度を構築したり、和解金が支払われたりするとしても、それは政治部門の問題であって、司法制度とは関係ない。

司法権の独立については、実定法学の枠組みでは問題ないかもしれませんが、「法的拘束力がなくても、反日的なNGOとマスコミが騒ぎたて、国連の勧告を御旗にして、運動を強め、世論を誘導し、法改正を迫ることは容易に予測がつきます。敗戦ショックのせいか、日本人にはなぜか国連信仰があるので、世論誘導にはもってこいです」という赤池議員のコメントがありますので、そこから解釈すると、一連の法的行為がもたらす社会的インパクトを認識・評価すると、社会(世論)への事実上の影響力を通じて司法の独立性に悪影響を及ぼすというものではないかと思います。
参考として、自民党議員の見解をまとめたものへのリンクを張っておきます。
国連女性差別撤廃委員会の勧告には拘束力が無いのならば、問題は起こらないのではないでしょうか?
http://www7.atwiki.jp/epolitics/pages/286.html#id_2f0fd395

(7) 課題の第1は、本委員会の見解と我が国の基本的な立法政策や裁判所の確定判
決の内容とはが異なる場合等における対応の在り方。(通報事例として、非嫡出子、再婚禁止期間、労働関係の男女差別、「慰安婦」など過去の問題等が想定)

国際法と国内法に矛盾が生じた場合の対応の在り方については重要な課題である。
ただし、これはあらゆる国際法において問題となることである。
「対応の在り方に課題がある」から条約に批准できないというのであれば、いかなる条約にも批准できないことになる。
課題があるなら、それは対応策を政府が決めるべきことである。
また、「現状ではまだ対応ができないから、」ということもあり得ないだろう。
非嫡出子の問題は、(そもそも女性差別の問題ではないという点はさておき)既に国際機関から何度も勧告を受けているにもかかわらず、日本ではその改正を行わないという方針でこれまでやってきているのだし、再婚禁止期間については、女子差別撤廃条約云々を抜きにしても既に議論が行われている。
労働関係の男女差別は、総論としては差別禁止で一致しているのだし、個別具体的な案件については、それこそ個別具体的に検討すれば済む。
慰安婦問題については、議定書第4条2項に定められた「通報の対象となった事実が、当該締約国について本議定書が発効する以前に発生している」案件であって、委員会が審理を受理できないものである。
そもそも、慰安婦は女性「差別」の問題ではない。
つまり、想定された事例については、特に困難な対応が求められるようなものではない。

「対応の在り方に課題がある」から条約に批准できないという点は、朝日新聞によると、個人通報制度は「この10年で制度が利用された例は、本人の十分な了解を得ずに不妊手術をされた事例など、各国合わせて20件にも満たない」との事なので、自民党と政府の認識は、左翼団体しか利用しないから対応したくないといった辺りだと思います。
慰安婦に関しては、「女性差別」の問題です。フェミニズム的な扱いでは、外国人従軍慰安婦は、女性差別と民族差別という二つの差別を背負った問題として捉えられています。この問題に関しては、条約批准を求める支援団体がそういう所ばかりなので、自民党内では確実に訴えるだろうと解釈されているようです。
支援団体一覧
http://www7.atwiki.jp/epolitics/pages/286.html#id_114c8565
自民党の部会での議論
http://www7.atwiki.jp/epolitics/pages/289.html#id_c131944e

(9) 課題の第3は、個人通報制度が設けられている他の人権条約への対応の在り方(人種差別条約53カ国、B規約(自由権)条約111カ国、拷問条約62カ国の3つ)
これも、「今後の課題」として遺されるだろうが、ある条約に批准したら、他の条約にも批准しなければならないという必然性は全くない。

個人通報制度を含む選択議定書に批准しない、政府の公式の理由が「司法権の独立を侵害する」というものなので、一つに批准したら、その理由が使えなくなって次々と批准を迫られます。

ところで、赤池議員の最後のコメント
他国では、日本のように法行政や司法制度、国民の遵法精神がしっかりしていないので、ケースバイケースでいい加減なのだといいます。
というのは、言ってる意味が理解できません。
まあ、日本人の遵法精神は他国に比べて高いということはあるでしょうが、それと今回の問題がどういう関係にあるのか、よくわからないですね。
どこの国を想定しているかわかりませんが、この選択議定書には、司法制度がしっかりしていない国ばかりが批准してるのでしょうか。
先進諸国で「司法制度がしっかりしていない国」ってのはそんなにないと思うのですが・・・。

「この選択議定書には、司法制度がしっかりしていない国ばかりが批准してるのでしょうか」という点はその通りです。
国際人権条約は、OECD加盟国限定の条約でも欧州諸国限定の条約でもありませんので、批准国が多い条約は「司法制度がしっかりしていない国ばかりが」批准しています。
日本の場合、国連にカウンターレポートを出すのは日弁連以外は左翼系の団体であり、個人通報制度の導入によって更にそういった事が促進されますので、そちらの基準で色々クレームをつけられるのを政府は余り好ましく思っておらず、ネット住民もその認識を共有しているのだと思います。
参考として、国際人権条約の種類や加盟国数などの状況をまとめたものへのリンクを張っておきます。
http://www7.atwiki.jp/epolitics/pages/287.html#id_60c44a96

追記

閑寂な草庵 - kanjaku - 女子差別撤廃条約の選択議定書批准に賛成する! その3
http://kanjaku.blog.shinobi.jp/Entry/425/

上記サイトから、回答のトラックバックをいただきました。
慰安婦問題に関しては、外務省の報告書を見ると「女性差別」の問題としてカテゴライズされています。
女子差別撤廃条約実施状況 第5回報告 (仮訳)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/fifth/index.html

議定書 第4条
1. 委員会は、利用し得るすべての国内的救済措置が尽くされたことを確認した場合を除き、通報を検討しない。ただし、かかる救済措置の適用が不当に引き延ばされたり、効果的な救済の見込みがない場合は、この限りでない。
2. 委員会は、次の場合、通報を受理することができないと宣言する。
1. 同一の問題が委員会によってすでに審議されており、若しくは他の国際的調査又は解決手続きの下ですでに審議され又は審議中である。
2. 通報が条約の規定に抵触する場合
3. 通報が明らかに根拠を欠いており又は十分に立証されない。
4. 通報提出の権利の乱用である。
5. 通報の対象となった事実が、当該締約国について本議定書が発効する以前に発生している。ただし、かかる事実がこの期日以降も継続している場合は、この限りでない。

批准支援団体にそっち系の所が多いので個人通報するのは確実だと思いますが、選択議定書の4条2項5号に該当するので受理されないと思うんですけど、詳しい方いましたら、コメントお願いします。

追記2

女子差別撤廃条約選択議定書について 稲田朋美の『今日の直言』
http://www7.atwiki.jp/epolitics/pages/290.html#id_3bc368a8
 21日朝8時から自民党本部で外交部会が開催され、「女子差別撤廃条約選択議定書」の批准について議論されました。
 すでに日本も昭和60年に条約に批准していますがまだ選択議定書は批准していません。もしこの選択議定書に批准をすると、個人や団体が直接国連に通報できることになります。私は「選択議定書」に批准することには慎重にすべきであるという意見をいいました。その要旨は次のとおりです。
①日本は国内での救済が不十分で国連に直接訴えなければならないほど男女差別の国ではない
② 仮に個人通報を認めると最高裁で結論がでたものについて国連から勧告が来ることにより下級審の裁判に影響を与えかねない。これは司法権の独立にも影響がでる

弁護士の稲田議員が「司法権の独立にも影響がある」といっているのですが、教科書的な解釈だと「影響はない」となりますが、法曹レベルでの解釈だと違ったものになるのか?それとも、ただオーバーにいっているだけなのか?という所の疑問が残ります。